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医療機関向けインボイスの登録基準
消費税の適格請求書(以下「インボイス」という)制度が10 月よりスタートします。今回は、インボイス登録の判断基準を解説します。
はじめに消費税を納める義務がある事業者(課税事業者)は、原則として基準期間(2 期前)における自費診療などの「課税売上高が1,000 万円を超える事業者」のことを指します。他方で、課税売上高が1,000 万円以下の事業者のことを「免税事業者」といい、売上の相手先から消費税を預かってもこの申告と納税が不要となります。そのため経理事務負担や納税資金の面で差が出てくることとなります。
■ 自院と取引相手は免税事業者か?課税事業者か?
インボイス制度の施行後は、課税事業者が支払う仕入や経費について、その消費税の控除(仕入税額控除)を取るためには、売手からインボイスを受け取り保存する必要があり、このインボイスは課税事業者でないと発行ができなくなります。つまり自院が免税事業者である場合、自費診療等で消費税を受け取ってもこれを納税しなくてよい代わりに、課税事業者である取引相手はその消費税の仕入税額控除を取ることができず、取引相手にとって自院との取引の魅力度が低下することを意味します。他方、自院の取引相手が個人患者や免税事業者だけであれば、相手に仕入税額控除の問題が生じないため、自院も免税事業者のままインボイスを発行しなくても差し支えないこととなります。
■ インボイスの登録はしておくべきか?
自院が課税事業者である場合は、インボイス発行の事務負担が発生しますが、基本的にはインボイスの登録をして差し支えないと想定されます。一方で自院が免税事業者で課税売上の相手先に課税事業者である企業や医師会などが含まれており、その取引を維持したい場合には、自ら課税事業者を選択してインボイスを発行するかどうかを検討する必要があります。課税事業者になることを選択した際には、自院も課税売上について消費税の納税義務が生じるため、取引の維持と税負担・事務負担の増加を天秤にかけた上で、インボイスの登録をするか判断をすることになります。
免税事業者が自ら課税事業者を選択してインボイスを発行する場合の負担緩和措置として、施行後3 年間は預かった消費税の2 割だけ納税すればよいという経過措置、免税事業者を継続する場合でも、取引先において、免税事業者に払った消費税については3 年間は80%相当(その後3 年間は50%)の控除を認めるという措置が設けられています。こうした緩和措置も念頭に置いてインボイスの登録をするか判断をすることは非常に難しいことですので、専門家と相談のうえ、慎重にご判断ください。