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シリーズ『保健医療計画をみる』【第7回】熊本編 地域医療連携
税理士・土居秀行のシリーズ『保健医療計画をみる』
本シリーズは全国都道府県の医療計画をわかりやすく紐解き、医療業界経験の長い税理士の視点でお伝えいたします。
「火の国熊本」由来を調べると、廃藩置県前の律令制時代にあるらしい。当時の熊本は「肥後国」。その由来は「火国(ひのくに)」「肥国(ひのくに)」だとか。であれば、長崎県も佐賀県もそうなるはずだが。それはさておき、阿蘇山、熊本城は多くの観光客を魅了する。また多くの温泉では日帰りではなくゆっくりと滞在して身体の疲れを癒したいものだ。
熊本県の面積は7,409平方キロメートルで全国第15位です。そのため、医療計画では10圏域が設定されている。これは何を意味するか。へき地が多く存在することとなるのである。そのため、熊本県の地域医療の現状も他の県と同様に厳しいものがある。
・医師の約6割が熊本市に集中。多くの地域で全国平均以下
・女性医師の増加(全国の大学医学部生の約47%が女性)
⇒出産、育児に関わらず働き続けられる環境整備が必要
・夜間や休日の当直等、地域で勤務する医師への過大な負担
・医師の専門医志向の高まり
⇒地域勤務とキャラ形成が両立できる支援体制の構築が必要
といった具合である。
少ない医療資源をどのように効率的に活用するかについて、熊本県では、「熊本県地域医療連携ネットワーク」「くまもとメディカルネットワーク」といった独自の取組みが進められている。独自といっても、ベースになるのは「地域包括ケアシステム」や、それを運営するための組織であるところの「地域医療連携推進法人」制度であったりするわけだが。
この「地域医療連携推進法人」が法制化されたのが平成27年の医療法改正時(施行は平成29年)であるので、施行後すでに5年が経過している。ところが、令和4年1月1日現在、「地域医療連携推進法人」は全国で30法人しか認定されていない。
産業界では、企業間連携によって生産性の向上を実現してきたのだが、医療業界での連携はもう少し時間がかかるかもしれないが、近い将来だと思う。それは、平成生まれの若い世代の人たちは昭和生まれの諸先輩方とは違って、連携の必要性に気付いていると感じるからである。誤解のないようにお断りしておくが、昭和生まれの諸先輩方を批判しているわけではない。私は、時代の変化に対応できる若い世代の方の感性と、諸先輩方の御経験によるハイブリッド経営こそが最強だと信じている。
「火の国熊本」が、熊本城の復興と同時に熊本県の「地域医療連携ネットワーク」を全国のお手本とされることを祈る。